戦前も日本自画自賛本が数多く出版されていた
「すごい日本」「日本は世界一」といった日本を自画自賛する本が国内で数多く出版されていますが、この状況は戦前にも起こっていました。当時の人々が自己愛を満たす商品に傾倒していったのです。
1930年代、日本を自賛する本が数多く出版
現在、書店に行けば日本を自画自賛する本が多数置かれていますが、山崎雅弘氏の著書「日本会議 戦前回帰への情念」によれば、1930年代にも当時の日本を自画自賛する本が数多く出版されており、当時と現代の様子を比較して次のように紹介しています。
書店に行くと、日本の国体を「万邦無比」だと際限なく自賛する本が数多く出版されていた一九三〇年代後半と同様、日本は素晴らしい国だと自賛する本が平積みにされています。そして、政権支持派の言論人や市民が、政府に批判的な人間を「反日」と呼び捨てて罵倒する光景は、政府の方針に疑問を呈した人間を「非国民」呼ばわりしてののしった時代を彷彿とさせるものです。
(山崎雅弘・著「日本会議 戦前回帰への情念」より)
現在販売されている日本自画自賛本の特徴は、日本を他国と比較し、日本人がどれだけすぐれているのかを特集したものです。
つまり現代の日本と同じく、1930年代にも「日本人は世界で最も優れている」といった自己愛を満たしてくれる商品が売れていたのです。
ネトウヨが国家に頼るのは自己愛を満たすため
日本を過大に礼賛する一方、他国を罵倒する、いわゆるネトウヨ(ネット右翼)と呼ばれる人がいます。
ネトウヨが国家に頼る理由を精神科医が分析で詳しく紹介しましたが、精神科医・片田珠美氏の分析によれば、ネトウヨは自己顕示欲や承認欲求を求め、自分の気持ちの受け皿となる対象物を探した結果、国家という巨大な対象物に魅力を感じてしまうのです。
国民の代弁者として政治家や政党が存在しますが、ネトウヨにとっての代弁者は自民党やその他の右翼政党、そしてそれらを支持する評論家や専門家です。
しかし、例えばネトウヨの代弁者である自民党が潰れれば、彼らにとって自己愛を投影できる対象がなくなります。
そのため、ネトウヨが自民党の政策に反対する評論家や野党の活動を毎日必死になって妨害するのは、自己愛を満たす対象物を守るという点で見れば合理的な行動です。