なぜ太陽光は風力より優遇されるのか

再生可能エネルギーの固定価格買取制度が施行されました。そのため、太陽光発電が優遇され、太陽光発電の導入が活発化しています。なぜ太陽光のほうが優遇されるのか。疑問を解きます。

制度がなければ、元を取るのに太陽光30年・風力9ヶ月

太陽光発電は(性能にもよりますが)「補助金」や「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」がなければ、お金の面でみると元を取るのに30年程度かかります。(詳細は我が家のオール電化&太陽光発電 太陽光発電の損益分岐点へ)

(今は補助金と再生可能エネルギー固定価格買取制度により10年程度で元が取れます。)

対する風力発電。風力発電装置は大きくなれば効率が良くなり、北欧のように風が強いところでは9ヶ月で元が取れます。

風力発電が太陽光発電よりコストで優れる理由は「発電コスト」「発電効率」「発電時間」に優れているからです。

発電コスト

太陽光発電47円/kWhに対して、風力発電では9~12円/kWh。太陽光の1/4です。

発電効率

太陽光発電の変換効率が約10%に対して、風力発電では40%。太陽光の4倍です。

発電時間

風力発電は昼夜を問わず24時間稼働出来ます。
(詳細はCEF・風力発電のメリットへ)

 次の章の表にも記載していますが、大型の発電の場合、風力は太陽光に比べ、建設費も運転維持費も安く住みます。

買取価格は太陽光42円、風力23.1円

2012年7月1日より施行される「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」の調達価格が決まりました。
大型の太陽光発電の買取価格

それによると、10kW未満の太陽光発電の買取価格は1kWhあたり42円。対する20kW未満の風力発電の買取価格は1kWhあたり57.75円。一見、風力のほうが優遇されているように見えますが、一般家庭で風力発電機を購入する人はほとんどいません。しかも、小規模の風力発電は効率の悪いのです。

では、企業が活発に投資している大規模発電の買取価格を見ていきます。10kW以上の大型の太陽光発電の買取価格は1kWhあたり42円。対する風力発電の買取価格は1kWhあたり23.1円。太陽光発電の方が大きく優遇されいます。

(買取価格の詳細は経済産業省資源エネルギー庁 再生可能エネルギーの固定価格買取制度へ)

なぜ、太陽光発電を保護するのか

政府は太陽光発電機の補助金と政治献金

補助金が出る理由は政治資金が増えるからです。

日本で太陽光発電に成功しているのはパナソニック(旧サンヨー)、シャープ、京セラなどの日本企業です。政府は太陽光発電機の購入者に補助金を出す代わりに政治献金を受け取ります。つまり、与党は選挙で有利なれるのです。

風力を普及させれば海外メーカーに支配される

かつてはシャープが太陽光発電の世界シェア1位でした。しかし、ドイツが太陽光発電での電力の買取価格を3倍に上げたことをきっかけに、シャープのシェアは下がり続け、今は世界で6位です。(太陽光発電の世界シェアの詳細はWikipedia・List of photovoltaics companiesへ)

各国で自然エネルギーを普及させる法律が制定され、それぞれの国の自然エネルギーを扱う企業が有利なるように仕組みが変わりました。そのため、ドイツや中国、アメリカでは太陽光発電の産業が活発になっています。一方、日本メーカーは海外で太陽光を販売しにくくなりました。
海外メーカーの風力発電が日本へ押し寄せる

ならば、次は風力の時代と考え、「日本にも風力発電を大量に導入すればいいのでは?」と考えます。

しかし問題があります。もし、日本に風力発電機を大量に導入しようとした時、実績と技術力のある海外メーカーの製品が導入されやすいのです。(現在でも日本にある風力発電機の75パーセントは海外メーカーのものです。)

日本に海外メーカーの風力発電機が導入されると、太陽光発電に比べ、すぐ元が取れるため日本の太陽光発電産業は衰退します。

失業者が増えると選挙で負ける

さらに深刻な問題が、失業者の増加。

大企業の業績悪化により、関連する中小企業も業績が悪化し、失業者が増えます。失業者が増えると、政権への不満が高まるため与党は選挙で負けます。

そのため、政府は大企業が有利になるよう何らかの措置をとる必要があります。そこで、政府は「再生可能エネルギー固定価格買取制度」を成立させます。再生可能エネルギー固定価格買取制度により国内の太陽光発電産業を守り、雇用と政府への信頼を高めることができます。

風力発電の補助金カット決定

そこで、太陽光産業を守るために、日本政府は風力発電を排除する必要があります。

東洋経済 風力発電の本格普及への高いハードル、補助金廃止で強まる“逆風”(3)によれば、再生エネルギー特別措置法による全量買い取り制度導入を見越して、2010年度からは発電所建設費の3分の1を補助する国の制度がなくなってしまいました。継続案件を別にして、2010年度以降、新規投資は完全にと止まっています。

よって、日本メーカーが画期的な風力発電機を開発しない限り、太陽光重視の政策は変わらないでしょう。

結論:太陽光でエネルギー問題は解決できないが、日本の技術力は守れる

よって、太陽光が風力より優遇される理由は

  1. 政治資金が入る
  2. 失業率低下による選挙の敗北を阻止するから
  3. 日本の優れた再生エネルギー技術を守るため

エネルギー問題を考えた時、風力発電の方が太陽光発電より優れています。残念ながら、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」によって太陽光発電推進の方向へ進みました。

しかし、風力や地熱発電が日本に導入されると、世界トップレベルである日本の太陽光発電の技術は衰退し、失業率は増えます。