財政破綻の定義
このサイトでは、「人口が減少すると国家は破綻する」などで日本の財政破綻について紹介してきましたが、今回は「財政破綻の定義」について紹介します。
実は明確な定義はない
残念ながら財政破綻に明確な定義がありませんが、主に次の3つに分類されます。
- デフォルト(債務不履行)
- 財政危機(金利急上昇)
- ハイパーインフレ(物価急上昇)
上記3つを簡単にまとめると、下の図のようになります。
一般的にデフォルト(債務不履行)を財政破綻と読んでいます。
通常はデフォルトを避けるために、大幅な歳出削減や増税をします。それでも資金繰りがうまくいかず借金を予定通り返せないなら、ハイパーインフレをわざと起こして債務を実質的に減らしたり、IMFから資金を借りたりします。
にもかかわらず、予定通り国の債務(国債)が返せないなら、デフォルトになります。
では、「デフォルト」「財政危機」「ハイパーインフレ」についてそれぞれ解説します。
デフォルト:国が借金を返せない状態
デフォルト(債務不履行)とは、国が借金(債務)を返済できない状態です。「借金を返さなくてラッキー」という訳ではなく、財政危機とハイパーインフレの両方、またはどちらかの現象が起きます。そのため、デフォルト時は次の事態が予想されています。
- 国債の償還期限の延長、元本の削減、利率の引き下げ
- 年金がなくなる
- 公務員給与の支給額が減額、または支給の一時停止
- 補助金や助成金の支給額が減額、または支給の一時停止
- 大幅な歳出削減と増税
- 倒産件数、失業率増加
- 治安の悪化
- 超円安
年金がなくなる
日本が財政破綻すれば年金はなくなるで詳しく紹介しましたが、国債がデフォルトすれば年金の支給が停止するか、支給額が大幅に減ります。
公務員給与の支給が減額、一時停止
国にお金がないため、公務員給与の支払いが遅れたり減額する事態が発生します。また、ボーナスや退職金は全額カットの可能性が高いです。
当然ながら、補助金や助成金も大幅に減ります。各都道府県、そして各市町村の財政は地方交付税交付金や国庫支出金に大きく頼っているため、どの自治体でも今の夕張市のように大増税と低福祉の社会が待っています。
デフォルトしても、財政危機とハイパーインフレがおこる
「国債がデフォルトすれば国の借金がなくなって楽になる」と思ったら大間違いです。国債がデフォルトすれば国の信用がなくなるばかりか、治安悪化や超円安、失業率増加、物価急上昇といった、財政危機とハイパーインフレの両方、またはどちらかの現象が起きます。
つまり、デフォルトを避けるために財政危機またはハイパーインフレが起きますが、デフォルトになっても財政危機またはハイパーインフレが起きるのです。
財政危機:金利が急上昇する
財政危機とは、国の信用度が下がり国債を発行しても誰も買わないため、国債の金利が急上昇する状態です。超円安にもなるため対外債務は膨らみます。大幅な歳出削減や増税ができなければ、IMFからお金を借りることになり、次の事態が予想されています。
- 年金の支給額が減額
- 公務員給与の支給額が減額
- 補助金や助成金の支給額が減額
- 超円安
- 金利急上昇
- 倒産件数、失業率増加
- 治安の悪化
- 住宅ローン難民増加
- 大幅な歳出削減や増税ができなければ、IMFからお金を借りることになり、事実上アメリカの植民地となる
大幅な歳出削減や増税ができなければ、事実上アメリカの植民地へ
財政危機の最も深刻な問題は、大幅な歳出削減や増税ができなければ、事実上アメリカの植民地になることです。
国にお金がなく、国債を発行しても誰も買わない場合は、IMF(国際通貨基金)から融資を受けます。
身近な一歩が社会を変える「映画『ジャマイカ 楽園の真実』でIMFの問題を知る」で紹介されていますが、ジャマイカが財政危機に陥り、IMFから融資を受けた時、次のことが起きました。
- (IMF出資国1位の)アメリカからの輸入品にかかる関税がゼロになる
- 補助金で価格が安くなっているアメリカ産の作物に、国内の作物が対抗できず、農業が壊滅状態となる
- 職を失った農民に対して、23%という高金利でお金を貸し付ける
IMFは財政難の国を助けるために融資をするのではなく、その国を支配するために融資をします。たとえ無理な要求であっても、その要求をのまなければ、ジャマイカ政府はお金が借りられません。よってジャマイカは、事実上アメリカの植民地となりました。
日本が財政危機に直面した場合はIMFからお金を借りることになります。最悪の場合は、日本が事実上アメリカの植民地になることも十分にありえます。
ハイパーインフレ:物価が急上昇する
ハイパーインフレとは、貨幣の価値が下がるため物価が急上昇していくことであり、次の事態が予想されています。
- 年金の支給額や労働者の賃金は実質的に大幅減少する
- 預金封鎖または預金の引出制限
- 超円安
- 治安の悪化
- 債務は実質的に大幅減少する
- 失業率低下
年金の支給額や労働者の賃金は実質的に大幅減少する
年金の支給額や労働者の賃金は以前と同じですが、物価が数倍~数十倍に上昇するため、年金の支給額や労働者の賃金は実質的に大幅減少します。
債務は実質的に大幅減少する
物価が急上昇しても、(利息がゼロなら)債務は同じ額です。一方、物価は年率100~3000パーセントで上昇していくため、借金が実質的に減っていきます。
よって、ハイパーインフレになれば国や企業、個人の債務は実質的に大幅減少します。
失業率低下
ハイパーインフレになると失業率は下がるで紹介しましたが、ハイパーインフレになると合法的に低賃金で労働者を雇えるため、失業率は低下します。
(一部の自称「経済評論家」らが、ハイパーインフレの定義を年間13000%以上としていますが、池田信夫 blog「財政破綻でハイパーインフレは起こるか」で解説している通り、実際には公式の定義はありません。)